カテゴリー: 読書・書籍・雑誌

2009/07/20 11:11

三猿金泉秘録 by 喜多村政一、300年前からの投資原則

~ 相場の三猿を知ること此儲けの極意なり、三猿住まうは己の心中奥深し欲望と恐怖の海なり。 ~

2009年、3冊目の読書。6ヶ月で3冊の読書というのは、ちょっと少ないんじゃない?なんて考えはナンセンス。今はネットに書籍と同じかそれ以上の情報があるわけで、その「読ネット量」を考えれば、相当な読書量です。書籍には知性、有用性、真実性など、プラスのバイアスがかかり過ぎなので、ついつい何冊読んだという事を基準にしがちです。

読了した本はこれ。

「三猿金泉秘録」 by 喜多村政一

三猿金泉秘録は牛田権三郎が1700年代(江戸時代)に書いた本らしい。牛田権三郎は大阪堂島の相場師で、当時は米相場で腕を鳴らしていた。牛田権三郎が米相場と格闘して悟った相場の何たるかを記した書物が三猿金泉秘録。

そして今回読んだ本は、その三猿金泉秘録を解説したもの。三猿金泉秘録は昔の書物なので、昔風の言葉で書かれているし、エッセンスだけが記されているだけなので、どう理解するかの解説が必要になる。それを目的として書かれたのがのが喜多村政一の本。

相場の秘密はこういうことらしい。

三猿とは、見猿、聞猿、言猿の三なり。
目に強変を見て、心に強変の淵に沈むことなかれ。只心に売りを含むべし。
耳に弱変を聞いて、心に弱変の淵に沈むことなかれ、只心に買いを含むべし。
強弱変を見聞とも、人に語ることなかれ。言えば人の心を迷わす。
是三猿の秘密なり。

自分風に訳すと、

目の前にガンガン強気の相場がある時、自分の心までガンガンの強気になったらダメ。売りを考えるときだ。
聞くこと全てが総弱気の相場で、自分まで弱気になっていたら失敗する。買いを入れるときだ。
相場の強気や弱気を考え、良いニュースや悪いニュースを見聞きしても、そっと自分の中にしまっておけ。口にすれば他人を惑わし、自分さえも惑わす。
これが三猿の秘密だ。

つまり、一言で言うと、かの有名な相場格言に行き着くのではなかろうか。

人の行く裏に道あり花の山

三猿金泉秘録はこのことを何やら呪文のような昔の言い回しで説いている。

300年前の相場でも今の相場でも、人間の行動はちっとも変わらないとつくづく思った。投資家の行動は2つしかなくて、どちらを取るかで金儲けになるか金損になるか決まる。

バブルの麻酔で痛みと恐怖を忘れて買いまくり、暴落で投げ売って大損する。バカげていると強気相場で売りを入れ、恐怖のどん底でチビリながら買いを入れる。結局、投資家にはその2通りしかないわけですか。

それは300年前からずーっと同じであって、300年前に相場師が知っていたことであり、300年間多くの投資家が知っていたけど実行するのが難しかったこと。

三猿金泉秘録はそれを教えてくれる。

さて、ここで問題は、じゃあバブルの絶頂ってどうやって判断するの?恐怖のどん底買時はどうやって分かるの?ってこと。PERを見ればいいの?GDPを知ればいいの?女性週刊誌の株式特集を眺めればいいの?

残念ながら三猿金泉秘録はそれを教えてはくれない。少なくとも具体的には教えてくれない。

三猿金泉秘録に限らずそれを教えてくれる書籍は無い。

結局、三猿金泉秘録が含蓄するように、自分の心に聞くしかない。

バブルとその崩壊を一回り経験した人なら誰でも経験しているはず。株なんて簡単だ、楽してこんなに儲かる、一生株で生きていける、そう信じた。もうダメだ破産だ、株なんて一生やるものか、株なんて儲からない、そう嘆いた。それが自分の心に聞くと言うことに他ならない。

三猿はその時に出没する。

そういうことで、この本は、投資を始めたばかりの初心者や、PERやREO、財務諸表にビジネスモデルなどの解説が必要な人などにはそれほど役に立たないように思う。それよりは、相場の春夏秋冬を経験した人が、相場の節々で読み返し、忘れちゃいけない事を思い出すためのキッカケとして使った方がいいと思うんです。

300年も前から生き続ける猿達を自分の近くにおいて損は無い。猿達はごく当たり前な事を思い出させてくれるのだから。

最後に自分風で三猿金泉秘録を一句。

相場の三猿知ること此儲けの極意なり、三猿住まうは自己心中奥深し欲望と恐怖の海なり。

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2009/03/16 11:11

この世でいちばん大事な「カネ」の話 by 西原理恵子 ★3

~ 投資して儲けるカネではなくて、人生・生活の何たるかのカネ、についてのお話。 ~

ようやく今年2冊目の読書。なるべく沢山の本を読もうと毎年思うわけですが、なかなかどうして。。。

この世でいちばん大事な「カネ」の話
西原理恵子

 ・総合得点:★★★☆☆(満点★5)
 ・こういう人向き:ギャンブルの怖さを知らない人、投資とギャンブルの区別ができない人、自伝が好きな人
 ・向かない人:投資本を探している人、お金の大切さや怖さを知っている人、専門的知識を求めている人

「カネ」の話、とありますが、読む人によっては全然カネの話に感じないと思う。筆者にとっては深く深くカネの話なんだろうけれど、投資的なカネを考えようと思っている人にはカネの話にならない。

つまり、カネのなんたるか、が書かれている。人にとってカネはどういうものなのか、みたいな。だから投資してカネを儲ける方法、どうやってカネを儲けるか、について書かれているわけではない。投資本じゃないって事です。

筆者はとても貧乏な子供時代を過ごしてきているそうで、それが具体的に書かれている。貧乏話は沢山あるので特に新鮮味はないかも知れませんけど、個人的には読んでいて面白いですね。

面白い、というと語弊がある。ありすぎる。面白いの意味するところは、笑えるとか楽しいとかではないですよ。心に響くというか、考えさせられるというか。

それは、ああそうか、そんな貧しい人もいるんだ、っていう「考えさせられる」ではない。もしかすると明日は自分がそんな風になっているかも知れない、っていう事。

そういう意味で、投資するにしてもよくよく考えないといけないし、まさか自分の投資行動が実はギャンブルなんじゃないかって、考える機会になる。

そもそもこんな事は、長いこといろんな投資をしてきて今さら考えることではない。けれど、どうしても忘れがちになるし、芯がぶれることもある。だから機会あるごとに思い出すのは悪い事じゃない。

株をやっている人たちだって、「この瞬間に決済をすれば、何千万円の儲けが出る」といいうことがわかっていても、まだじーっと株価の様子を見ている。もしかしたら、もっと儲かるんじゃないかと思うと、なかなか決済の判断ができない。

商売だってそう。売り上げがいまいちになってる店が、五百万円かけて店をリニューアルしたとしようよ。それでも客の入りが悪い。一ヶ月に百万円ずつ赤字が出る。その赤字は毎月増えていく。でも「五百万もかけて店を新しくしたんだから」って思うと、ここでもうやめようという決心ができないものなのよ。

そうして「引き時」を見誤って、お店を潰してしまう。

大手の企業なんかだと、「赤字がこのくらい出たら、その部門は撤退」というマニュアルをあらかじめ決めてあるんだよ。そのくらい引き時を見極めて、ちゃんと「やめる」という決断をするのって、本当に難しいものなんだって思う。

ここでやめたら、ゼロどころかマイナス地点に立つしかない。「あとがない」という状況に立たされたら、マニュアルのない個人が、なかなか、やめられるものじゃない。

分かっているんです。みんな心では分かっているんです。でも損切りができない人、一杯いる。ここまで下げたんだからもうそろそろ反発だ。反発してから売るんだ。そうやってずるずるとどこまでも行く。ここで大逆転だって、信用レバレッジで突っ込んでしまう人もいる。

筆者はFXも体験していて、1000万円を溶かしたという。あっという間に。どうやら、何かの雑誌の連載で、1000万という身銭を切ってFXをやったらしい。麻雀でもトータル5000万は持って行かれたらしい。

貧乏からお金持ちになれて良かったね、っていう話じゃないですよ。

内容紹介(Amazonより)

西原理恵子が「カネ」を通して自らの生き様と理念を語る初の自伝的エッセイ登場!故郷での貧しさゆえの八方ふさがりの生活。東京に出てきて学校に通いながら自分の絵を出版社に持ち込み次第に認められて行く。そしてギャンブル、アジアへの旅で出会った貧しい子ども達、大切な家族の事。

「お金」について考える事は人間関係・仕事関係、つまり自分と世界との関わりにつながっていくのです。漫画で描かれた西原ワールドがより深く・よりリアルに迫って来る1冊。西原ファンならずとも納得・感動の1冊です!

アマゾンのおすすめ度は結構高くて、53件のカスタマーレビューで4.5星(5星満点)。ベストセラー順位は89位、エッセー・随筆部門では4位。それなりに話題の本なのかもしれない。

 

読書・書籍・雑誌
エッセー ギャンブル 投資

2009/01/21 10:10

はじめの一歩を踏み出そう by マイケル・E. ガーバー 、起業本★4

~ 起業する人の3タイプ、起業家タイプ、マネージャータイプ、職人タイプ、を意識して対策する。 ~

2009年最初の読書。今年はなるべくたくさんの本を読みたいですな。って、これは毎年思うんだけどねえ。あと、これまで読んだ投資本でナイス!って思った良書を全て再読したい。

今年の読書は起業本でスタート。これです。

はじめの一歩を踏み出そう―成功する人たちの起業術
マイケル・E. ガーバー (著)

  • ・総合得点:★★★★☆(満点★5)
  • ・こういう人向き:起業する人、プチビジネスを始めたい人、始めてみたけどうまく行っていない人
  • ・向かない人:起業したいのでお役所書類とか会計とかの手続き関係を知りたい人

起業したい人は多いと思います。起業なんて言うと何かたいそうな事のような感じがしますけど、そんな大きなコンセプトではなくても、ちょっとサイドビジネスしてみたいなって人も沢山いますよね。何年か前にはプチ起業とか週末起業とかいう言葉が流行ったし。

この本はそういう人達に向けて書かれている。

所謂起業本には大きくわけて2種類ある。一つは、起業に必要な手続きを説明したもの。例えば、お役所に出す書類をどうするか、帳簿はどうするか、資金をどうするか、銀行口座をどうするか、など。つまり、ある意味、事実・決まり事を説明しているわけですな。

もう一つは、起業の心構えとか、実際のビジネスでぶち当たるであろう問題などを説明したもの。ある意味、メンタル・ビジネス実務(数字以外)の面になるかと思う。

で、この本は後者。

起業というと、何かと前者を非常に気にする人がいるが、それは優先順位を間違っていると思われる。なぜなら、書類や会計なんかは、とりあえずいい加減でも問題ない。そんなものは儲かってからやっても十分間に合う。まず無い事だが、例え税務署に怒られたとしても知れている。

やっぱり重要なのは後者ですよ。

本書はパート1、2、3に分かれているけど、パート1がとても良いことを言っている。パート1の目次。

  • 1.起業家の神話
  • 2.「起業家」「マネージャー」「職人」-3つの人格
  • 3.幼年期-職人の時代
  • 4.青年期-人手が足りない!
  • 5.誰もが経験する成長の壁
  • 6.成熟期-商品よりも重要な起業家の視点

ポイントは、起業家には3タイプの人間がいるってこと。起業家タイプ、マネージャータイプ、職人タイプ。

起業する人で一番多いのは職人タイプ。職人というと、いわゆる「職人」をイメージするかも知れないが、そうではなくて、ある事に打ち込んで黙々とやって完成させる事を得意とする人間ってこと。しこしこコツコツやる、集中してやり抜く、そういう感じの人間。

こういう人は、ある事に関しては技術・知識を持っているから、自分で作って売ればそれでビジネスになると思いこむ。パンが作れるからパン屋、ホームページが作れるからWebデザイナー、コーヒーが好きだから喫茶店、みたいなね。

でも実際にパン屋を開店すると、忙しいばかりでちっとも儲からない。美味しいパンなら売れるから、気ままにパン屋をやって行こうと思っていたのに、忙しいばっかりでパン焼くのが苦痛。そういう風になります。

喫茶店始めてもお客が来なくて赤字でどうしようもない。半年で閉店するなんてよくある話。

つまり、そういう職人タイプの人には、「起業家」と「マネージャー」の能力がないし、そういう事を意識もしない。それじゃあビジネスはうまく行かない。

同様に、起業家タイプには「マネージャー」と「職人」の能力が欠けていて、マネージャータイプには「起業家」と「職人」の能力が欠けている。

結局、そういうことをよーく意識して、3つの能力をうまく使わないとダメ。

こういう事はやっぱり起業する上での必要最低限の知識というかメンタルというか、大切な要素ですな。

パート2、3になると、起業後のマネジメントやマーケティング、システム戦略などについて話されている。まあ、この辺りは起業に必要と言うより、その先って感じ。それに、そういうビジネス実務に関しては専門的に詳しく書かれた良書が沢山あるのだから、なにも、こんな起業本で書くこともないんじゃないですか?

ってことで、これから起業しようと思っている人、プチビジネスを始めたい人、やってはみたものの思うように行かずに困っている人、そういう人達はパート1だけは読んで損は無し。

訳本なので文化的に何か違和感が少しあるのは仕方ない。

最後に「BOOK」データベースから転載。

25000社以上のコンサルティング経験に基づく長年のノウハウを初公開した本書は、発売以来、米国の起業家たちから熱狂的に支持されている。世界20か国で翻訳され、100万部を超える隠れたベストセラーである。米・ビジネス誌「Inc.」が行った成長企業500社のCEOへのアンケートでは、ビジネス書No.1に選ばれた。アメリカの起業家たちに最も影響を与え続けているバイブル的な一冊。

読書・書籍・雑誌
ビジネス 書籍 読書 起業

2008/10/05 09:09

最新行動ファイナンス入門 by ジョン・ノフシンガー

~ 心理的バイアスがかかって投資家は合理的な投資をしないことが多い。 ~

最新行動ファイナンス入門 by ジョン・ノフシンガー

読んでみたいと思って既に5,6年は経っているような気がする。ようやく読むことができた。

難しい名前の投資理論はたくさんあって、例えば、ブラックショールズ理論なんていうのがあるし、資産評価モデルとかポートフォリオ理論とか、挙げ出せばきりがないわけです。そういう理論の前提となっているのは、投資家は期待収益率とかリスクとか、そういうものの確率にしたがって行動するって言うこと。常に人は合理的な判断をするって事です。

だけどね、自分の投資行動を振り返ってみて、いつもいつも合理的でしたか?合理的だったと信じ込んでいるだけじゃないですか。

人間誰しも感情を持っていて、なかなか勘定だけでは動けないものです。

そういう感情や思いこみ、雰囲気などなど、何か数字的に合理的でない「心理的バイアス」があって、そういう所に焦点を当てるのが行動ファイナンスってやつですね。自分なりの解釈なので、学問的な解釈は違うかもしれないけど、ほぼそういう感じです。

例えば、1.毎月1万円払って12ヶ月後(12万円払った時点で)冷蔵庫をもらう。2.冷蔵庫を今すぐもらって毎月1万円を今後12ヶ月払う。という選択肢がある場合、どっちを選びますか?普通2ですよね。その方がお得です。理屈的にも2の方が合理的です。

じゃあ、1.毎月1万円貯めて12ヶ月後(12万円貯まった時点で)海外旅行に行く。2.今すぐに海外旅行に行って毎月1万円を今後12ヶ月払う。どちらを選ぶ?最初の冷蔵庫の例をすでに読んでいるので、ああ2の方が合理的だな、と今は思う人が多いかもしれない。だけど、冷蔵庫の例がない状態でこの質問をすると、ほとんどの人は1を選ぶ。はず。

が、その選択は合理的ではないです。その理由は冷蔵庫の例で分かりますな。

そういう心理的バイアスが投資行動に影響を与えて、投資家は間違った選択を正しいと思いこんだり、間違いを無理にねじ曲げたり、いろいろやっちゃうわけです。

だから、そんな心理的バイアスがあることを理解し知っておくことで、それが投資に生かせるはずなのです。って、世の常だけど、理解し知ってるからって投資成績が上がるとは限りませんけど。少なくとも、知っておいて損はなし。

読書・書籍・雑誌
書籍 行動ファイナンス

2008/10/04 16:04

ふしぎなお金 by 赤瀬川原平

~ 子どもみたいなお金の?を大人の絵本でスッキリ爽快。 ~

ふしぎなお金 by 赤瀬川原平

「大人の絵本」的な趣で、字は少ない。どれぐらい少ないかというと、数分で読み終わってしまう少なさでありますな。

だけど、それはあんまり問題じゃなくて、実に示唆に富んでいて面白い。なんとも言葉に表すのが難しいんだけど、ずっと胸に支えていた小骨がスッと取れた感じがするわけです。

目次

  • I 財布と拳銃
  • II 現金は血液
  • III お金の祖先
  • IV ニナの手形
  • V 悪貨は良貨を駆逐する

お金をむき出しで手に持って歩いたことありますか?そうしたとすると、多分、何かしっくりこなくないですか?いけないことをしているような、危ないことをしているような、見せちゃいけないものを見せているような。お金をむき出して手に持って歩いている人を見ても同じ事を感じないですか?

なぜそういう風に感じるんですかね?実はこれ、数日前に「なんでだろう?」ってまさに考えていた事なんですが、その一つの答えが書いてあるんです。もちろん、その答えが正解、というわけではなく、一つの視点なんだけど、これがしっくりくるんです。

株式相場で損したり得したり。世界中の人達が金儲けしよう、だましてやろう、出し抜こう、そうしているのが株式市場だし資本主義経済なんです。今一番問題になっているサブプライムだって同じ。なぜそんな「悪いお金」が世の中にこれほどまでに広がって、日本で細々と生活している庶民にまで影響を与えているのか?

小難しい金融理論はさておいて、悪化は良貨を駆逐する、ってことでサブプライムを考えると気が抜けていい感じ。

力が抜けている感がいいんですな。

読書・書籍・雑誌
ふしぎなお金 書籍 赤瀬川原平


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